「家族のこれから-10」


 それから洗濯や、昼飯等を終え。
 二人で買い物に出た。
 朝から乾かしていたサディクの服はまだ多少湿っている感はあるものの、おおかた乾いており、1時あたりには着替え、家を出る事が出来た。天気がよくて本当に良かったと思う。
 行く先は小さなショッピングモール。
 ここは比較的近いので、日用品を買うのに重宝するのだと菊は言った。
 重い荷物の時はどうするのだと聞くと、店の車を借りたりするらしい。車の免許は一応持っているが車を置く場所もなく、電車でも都心に出るのは利便は悪くない為、持っていないという事だった。
 ちなみに、当然ながらこの場にハークは居ない。
 昼まで寝ていた子供は、昼食も食べていなかった。だから菊が買い物先で食べようと言っても、どうにも行かない、行きたくないのだとだだをこねたらしい。子供の精一杯の抵抗のつもりなのだろう。
 だが昨日の今日で、サディクと一緒に出かけるというのは気まずいのだろうと菊が子供心を判断し、最終的には留守番を頼んだらしい。
 昼食もラップのかけてあるものを、ちゃんと食べる事という約束もし。おうちをしっかり守って下さいねと菊が言うと普段は必ず一緒に出て行く為、滅多にない事らしく、かなりやる気にはなっていたらしい。
 家を出てから数分の間は、やっぱりあんな小さい子を一人にするなんて、危ないですよねと暫く後悔する仕草を何度も見せていたが、戸締まりもしっかりしていたし、2時間以内に戻ればいいという結論に達したらしく、買い物は急ピッチで進められることとなった。
 パンツも試着する事なく、多分これだろうと放り込まれ。服は店員にサイズを測ってもらったりしたものの、一緒に居たのはそこまでで、気に入るものを買って下さいねと金を渡され、菊は夕飯の材料を買いにいってしまった。
 二人で選ぶという楽しいショッピングを多少なりとも期待していた身としては、肩すかしの感が否めない。店員の前であからさまにがっかりする訳にもいかず、どれがいいですかねと寂しく話しかけたりした。
 日本語がしゃべれるんですねと驚いた定員と、暫くは話をしたり、勧められたりされていたが、かなり店員の趣味とサディクの趣味はかなりかけ離れているらしく、途中からは一人で選んでいた。
 結構にいろいろなものがある。小さなショッピングセンターでも侮れない。
 いろいろ見ていればあっという間に時間が過ぎていたらしく、買い物袋を抱えた菊が戻ってきた。いや、ただ菊が急いで戻ってきただけかもしれない。
「サディクさん、お買いになられましたか?」
 小さな身体で両手に荷物を抱え、重たそうで。
 サディクは持ちましょうと手を出した。
 だが、それでは貴方が買い物も出来ないからとあちらで待っていますから。そう言って、菊はベンチの置いてある休憩所を指差した。
 そんなと、サディクは顔には出さないものの子供のように嫌がった。せっかく菊さんと一緒にきたのにと思いながらも、顔はにこやかに、無理矢理菊の手から荷物を奪い取る。
「や、俺ぁ良くわからねぇんで…菊さんに選んで頂きたいんですけど…」
 半分は確実に嘘だ。なんだかんだいっても、記憶を失おうが、物を見る目はそこそこあるつもりだ。
 だが居候の身、安い物で全然構わない訳だが、出資主に選んでもらった方が気が楽だ。それにやはりちょっと、いやかなり嬉しいではないか。
「ええっ!私ですか…!?その…最近のファッションには私うとくて…。」
「俺もぜんぜんだめですぜ〜ほら、でも菊さんに選んでもらった方が、その、金銭的にも気遣いしねえで済みますし。」
 しどろももどろな菊に、無理かなと思いながら甘えた声らしきものを出すと、菊は渋々ながらもわかりましたと了承し、所々悩みながら選んでくれた。
 時計を見ながらであったから、急がねばならないと考えていた事もあったかもしれない。
 菊は基本的には地味な色ばかりを選んでいたが、全体的にはきちんと考えられたコーディネイトだった。サディクにもきちんとあった物で悪くない。
 恩人の感性は決して悪くなかったのである。
 最終的にはシャツを2枚とTシャツ2枚。ズボン2着。下着2枚。靴1足に靴下2枚をそろえた。先ほど言ってくれていた浴衣も買ってくれていた。
 なぜ一枚ずつではないのかと思ったが、長い間一緒にいることを菊が望んでいるのではないか?というかなりのプラス思考で考え、気になるが気にしない事にした。


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