「HAPPY HALLOWEEN?-1」


はっぴーはろういん!




「とりっくあとりーと!おかしくれなきゃいたずらするぞ!」

きゃーっと叫びながらばたばたと、カカシの目の前をかけていく可愛い子。
いつもはひとくくりにしている髪をすべて下ろして、大きな帽子を目深に被って、つっかかって…転けるんじゃないかというような大きなズボンを履いている。
その背には何故か天使の羽を背負っていたりしていて…普通はあくまの羽とかじゃないのかと思われるのだけど。
なんだかちぐはぐこの上ない。いったい何を目指していたのか良く解らない…というか、イルカのお父さんお母さんの趣味を疑うのだが。
…冷静な目で見ればそうなのだけれど、そんなセンスの悪い格好でさえ可愛くて堪らないのだから、カカシは自分の方がよっぽど末期なのだろうなとか…思わないでもない。

イルカのその小さな手にはなぜか大きな箒とバケツ。
ここらへんは多分イルカの趣味なのだろう。きっとイルカ的に魔法使いときいて思い浮かぶものが箒なのだ。
いや、子供離れしたカカシだってそうなのだけども…。
もう片方のバケツはなんで持ってるのかちょっとわからないけれど…すでにいろんな人からお菓子をもらったのだろう、結構に一杯になってきている。
あ、たぶんこれが目的だろう…おかしを山盛り貰う為の。

「きゃーイルカちゃん!いたずらしてして〜〜〜!そしたらお菓子もいーっぱいあげるからねっ!」
いやいやまてまて、その台詞全部間違ってるから。
そう心で呟いて、今にもカカシの最愛の可愛い子に抱き着く寸前の、頭がすっかりお花畑化してる先生の襟首をカカシはひっつかむ。
けれど、先生はカカシの力など無視して、何もなかったかのように走り回るイルカを捕まえてその腕の中に抱き込んだ。
「あーもうっイルカちゃん可愛い!!」
ほおずりしてぐりぐりして。もう今にも舐めんばかりの猫可愛がり。

…それは俺のなんですけど、先生。
カカシは素早くその頬をつまんで、ぎりぎりと抓り上げる。そりゃもう容赦のないちからで。
あんたがはじめお膳立てしてくれたとは言え、今はもうイルカは俺のだもん。勝手にさわっちゃ駄目だってんだ!
「…先生…なにしてんの…」
ひやりとした声を出しても…先生のにまにまは収まらない。もちろん腕の中のイルカだって離そうともしない。
「らってーヒャヒャヒフン〜イルファひゃん、かはひすひらとおもはなふぃ〜?」
「…きゃははははは!何いってんの、四代目〜ってかおかしなかおすぎっぷぷぷぷぷっ!」
あははははははと大声でイルカが笑う。
「笑いごっちゃじゃないよ!イルカ!もうっ先生も解ってる癖にやめてよ!」
ぷりぷりと怒ってさらに引っ張るけれど…ってどこまでのびるんだこの頬は!
なんだかありえないくらいにのびんのびんになってる先生の頬。
「ヒャヒャシふん、いらい!いらいっればあっ!」
つい伸び過ぎる頬に夢中になっていて、カカシは手を離すのをすっかり忘れていた。
「きゃきゃきゃきゃ!四代目すごいすごいっ」
その声で、これ以上イルカの気を先生で惹いてたまるかとばかりに、勢いをつけてぷいっと離せば、それはすごい音をたてて…ばちんっと元に戻った。

…なんかどっかのキャラを思い出すなあとカカシは渋い顔で思うけれど。
「いったああああああいっつ、ひどいよカカシ君!先生のほっぺをなんだとおもってるのっ」
泣きそうな顔のくせに、やっぱり膝の上のイルカは離そうとしない。
それどころか痛いよ、イルカちゃん…ひどいよねカカシ君たらさ…とかいって頬をカカシの目論見とは逆に擦り寄せている始末。
大きな帽子が邪魔だといわんばかりに、そのへりを押し上げて、めいっぱいカカシのなはずの…イルカに近付いて。
「…イタイ?そんなにいたいの?だいじょうぶ?四代目…まっか…?」
イルカは手を先生の頬にあて、心配そうに顔を覗き込んだ。先ほど迄ぎゃはぎゃは笑っていた癖に、現金だけれど、涙をみせられたら途端イルカはやさしくなることをカカシは知っている。それは男女性別変わらずにやさしくなるのだけれど…イルカは将来ぜったいフェミニストになるタイプだろうと確信している。
けれどそれとは話は別で。
もう、イルカ迄…俺を無視してっ!
カカシはもう、勘弁ならんとばかりに二人の間にダイブする。
「ちょ、カカシ君…わっ」
当然ながら、ぴったりとくっついている二人の間にどーんと勢い良く…した訳だから、カカシの頭はイルカにすりすりしている四代目の顎に見事にクリーンヒットした。
「ごげっ」
…もんの凄い音と何かがへしゃげたような声がした。
「よ、四代目!?」
その音に反応したのか…イルカが悲鳴を上げたけれど、こんなことでくたばるような先生ではないことをカカシは良く知っている。

先生がこれくらいでやられるなら、俺だって火影になれる。そりゃもー楽勝で。
そう思うとカカシはすばやくイルカを肩に抱え上げる。
大概カカシもチビな方だけれど、イルカはもっとちっこい。多分好き嫌いが凄く多いのだろう…だからこんなにやせっぽっちでとても軽いのだ。
もっと年をとったら…絶対カカシより大きくなるのだといっているけれど、それはやっぱりきっぱりはっきり、絶対無理だろうとカカシは確信していた。
イルカを抱え上げたそのまま、カカシは無言で窓から飛び出そうとする。
「へ、かかし?な、なにするんだよ!ちょっとまってよ、どこいくの?!よ…」
それに続く言葉を聞きたく無くて、カカシは声を張り上げながら飛び下りる。


「二人っきりになれるところっ!」
先生とカカシは、イルカが尋ねるのを待って…二人で先生の隠れ家に待機していた。

オビトとリンは、イルカと一緒にお菓子を貰いにいくのだと一緒に出ていってしまった為、先生と二人きりで待っていた。
いや、別にカカシも一緒にいってもよかったのだけれど…建て前としてはそんな子供っぽい行事に俺は参加しないという理由を上げていた。
もう上忍にもなるのに、どうして?くだらないと冷めた態度でオビトを鼻で笑ったりしたけれど。

実の所…絶対に知られたく無いことだが…カカシは今年のハロウィンをとてもに楽しみにしていたのだ。
去年迄は、ずいぶんと冷めていた。
子供らしくない子供の代表であったカカシは、なにが楽しくてそんなことをするのかと…真実、オビトや他の子供達を見下して、つまらないことを…などと思っていたのに。
けれど…今年はとてもうきうき、そわそわとしていたのだから。

その訳としては…いまや最愛の人。
イルカと知り合えて、こんなにも…お近づきになれたからだ。
大好きな人が楽しんでいるのに、隣にいる自分が楽しくならない訳はなかった。
けれど、パレードについていくのも…正直ちいさな子供ばかりのそれに参加して、気分を害するのも…いやだと憚られ。
いかないといえばイルカは、どうしてなのだと哀しそうな顔をしたから。本当はいくと今にもいいそうになったけれど…。

カカシはどうしても…イルカを待っていたかったのだ。
イルカだけを待っていたかった。
そして自分の元に辿り着いた御褒美にと、沢山のお菓子をイルカにあげたかった。そうして、喜ぶ顔がみたかったのだ。
酷くおませな感じはするが、これがカカシの精一杯考えたイルカを喜ばせることができる方法だった。

子供達だけの…おかしを強請りながら町を練り歩く…仮装パレード。
年に何回もあるお祭りの内の一つ。
戦争中だからとそれをやめることもないのだと、いつも大々的に行なわれる。
むしろ沈んだ気持ちを浮かせる為にかも知れない。

ようようの衣裳をきた子供たちに、目を楽しませてくれたお礼みたいなもので…お菓子をくれる大人たち。
本当は厄よけとか…豊穣の祝だとか色々あるみたいだけれど…子供達にはそんなことは関係ない。

楽しめて、おかしさえもらえればそれで良いのだ。
そうやって…子供の特権を活かし、楽しむこことがお祭りの極意。

得意満面の顔でいうイルカに、カカシはなるほどそういうものなのかと頷いた。横にいるオビトはそんなカカシを目をまるくして見つめていたが、そんなカカシを一度としてみたことのなかった者の反応としては…まあ当然のことかもしれない。

可愛いイルカ。
森での特訓中に出会った、迷子のドジっこアカデミー生。
出会った瞬間から、トンでもなことをやりまくって、もう強烈な印象をカカシに残し。世界には…こんな生き物もいるのかと…驚異を感じたりもしたけれど…。
今や、良い思い出とは言え。…小さいとはいえ、宙からいきなり飛び出してきた少年の…股間を顔に押し付けられたという、普通なら悶絶モノのその感触は今でも忘れられない。
いやそれに反応できなかった自分が悪いといえば悪かったのだが。

数日間はその感触のお陰で悪夢を見て、眠れなかったのは今でこそ…本当に…良い思い出だ。
…今では悪夢で無く…おかしいくらい至福なのがちょっと変態チックだとも思うがまあそこは惚れてしまったんだから仕方ない。
兎に角、類を見ない…なにか違うものを…
出会った瞬間、感じていたような気がする。
なんか歌のようなフレーズだけど、ホントなのだから仕方ない。

けれど初めは…そんな恋愛とかの感情は子供のカカシにはまるで解らなくって、ついつい無神経ともいえる、子供のイルカに随分と冷たくもしたのだ。
だってどきどきの定義がちっとも解らなかったし、正真正銘、初恋だったのだから仕方ない。
なのに…あんまりにも…イルカが無邪気に、かわいらしく懐いてくれたものだから…いつのまにか、自分でも気付かない内に…すっかりイルカにはまっていたのだ。
もう初めから…それはひとめぼれだと先生に断定され。
これも今のカカシの感情に大いに影響していると言える。
だって…洗脳するがごとく毎日、
『カカシ君はイルカちゃんに一目惚れなんだよね、大好きなんだよね、ほらどきどきしてるよ〜』
を繰り返されれば誰だって、多少はそうなのかもしれないとか思ってしまうのが普通だろう。
でも、今はしっかりとイルカへの想いを自覚していて…先生にいわれるまでも無いのだけれど。
出会った次の日から行なわれた迷惑このうえ無かった先生の、カカシ君はいいこですよ〜かっこいいんだからつきあわなきゃ損損!的なアピールもイルカに惚れ切っている…今となってはちょっと…だけ。感謝しているのだ。

お陰で…イルカもカカシを好きだといってくれたのだから。
照れながらも、一番好きだよといってくれたのだから。
やっぱり感謝しない訳にはいかないのだけれど。
だが、余計なおまけまでついていたのにはちっとも戴けない。
カカシの魅力をさんざんイルカにひっついてアピールをするうちに、先生迄もがイルカの魅力にめろめろになっていったのだ。

…これぞ大誤算ってやつだよね。この火影ともあろうものがさあ…?

…本人がいっていたのだからこれはまず、間違い無い。
カカシ君のお嫁さんに恋しちゃったみたいなんだよね、これってライバルってやつだよねえ…どうしようか?とか真顔でいってきた時には、いま開発中の雷切でぶったぎってやろうかと思ったくらいだ。
先生、それ犯罪だからとか…まあ、普通に考えて駄目であろう…人道を説いているというのに、愛に年令は関係ないでしょ?性別もね!とかいって天然先生らしく爛漫に常識を蹴飛ばすものだから…。
カカシはこの世で一番恐ろしいライバルを…先生に持つことになってしまったのだ。


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…ブラウザ閉…