|
もう解り過ぎる程解っている。
今やつら…世界の敵をみたらかなりやばい状況に陥る事間違いない。気持ちの整理が付かない今…恐らくパニックに陥いるだろう。 なんて恐ろしい男だ…うみのイルカ。 こんな短時間で至極簡単な筈のDランクを手強すぎるAランクに変えてしまうなんて…! カカシは認識を改めた。 この人は本当に変な人だ…侮れない。 まだげほげほと咳き込んでいるイルカの背をナルトと一緒になって擦りながら、真剣な顔で見つめてカカシは深くうなずいた。 「それでは…お願い致します。あの悪魔共をっ!駆除お願い致します!」 土下座の勢いでがばりと頭をさげたイルカにナルトが漸く拘束をはずされ、おうよ!と元気よく応えた。 その笑顔は少々引きつってはいるのだが。 「…やるか…」 そう応えたサスケも顔面蒼白ではあるが、やる気は充分な様だ。 手加減は出来そうにもないな… こうなったら全速力で潰す。視認する前に潰す。…いや気持ち悪いからやっぱ急所(?)ひとつきで。 「…まあ…大船に乗ったつもりでお任せ下さい…では…まずは奴らの住処を暴く所から…」 「台所があやしいってばよ!」 「そうだな…奴らは食べ物がある所にむらがる…あぶり出して一気に叩くのがいいだろうな…」 「…た…頼みます…っ!」 そう言ったイルカは土下座の格好のまま一向に動こうとしない。 やる気を出して…立ち上がった三人の間に沈黙が落ちる。 一応カカシも何度も通った身だし、サスケやナルトもこの家の間取りは知っているだろうが。 けれど…けれどもだ! 家主ともあろうものが案内をしなくてどうするんだ! しかも俺達にアレ程の恐怖を植え付けた本人の癖にっ!卑怯ものっ!イルカ先生の意気地なし! そう思ってもそれを口にしてイルカを詰るのは上忍のプライドが許せない訳で。 ましてや今や…あの黒いものを恐れている等…そんなことをぶちまけて部下やイルカに上忍のくせに…情けないと思われたら堪らない。 「せんせーっ!先生がこないでどうするんだってばよーっ!」 恐いもの知らずの意外性ナンバーワンの部下の発言に、救われたとイルカを見つめれば泣きそうな表情でイルカは顔を上げた。 あ、ちょっと間抜けで可愛い。 そう思ったけれど、また更に突っ伏して「だって恐ろしいんだ−!俺には無理だ〜!」と泣き出したイルカを三人で必死に大丈夫だからとなだめる羽目になった。 落ち着いて!俺達がついていますからと必死に何とかせめて泣き止めとなだめすかすこと20分。(三人ともイルカが泣いているのはどうも落ち着かないらしい) えっぐえっぐと鼻を啜りながらも…なんとかぽつりぽつりと語り出した、イルカ曰く。 カカシが先週の最後にイルカの家を訪れた時以来。出現したアレをカカシが駆除した時から、台所には一度たりとも足を踏み入れていないと言う。 あれがいるかと思うと、足が竦んで一歩たりとも入れなかったらしい。 だから食事も作る事が出来ず、三食がすべて外食だから嵩んで嵩んで…もうにっちもさっちもいかなくなっちゃって…ぽりぽりと鼻の傷を掻きながらイルカは語る。 そして…悩みに悩んだ挙げ句、もうこの際金がかかっても構わないと火影に依頼書を持っていったと言う。 仕方ないのおと…同じ里のよしみだと…ちょっと割り引いて下さったんですよ!と僅かに笑ったイルカにカカシは脱力する。 …あの話をあんなにリアルに語れる人の台詞とはおもえねえ…!んで火影様もこの人に甘い…あますぎる…!そこで一笑にふしていれば俺達は今こんな目にあわずに済んだってのに…! まあそう思ってもまさに今さら…後の祭である。 恐怖は存分にカカシ達の中に根付いてしまったのだから。 「でもさでもさ〜イルカ先生がいないと俺、お玉が何処置くとか覚えてらんねーってばよ?前変なとこに戻したらすっげえ怒った癖にさ!」 「いやこの際そんなものはどうでもいいから。兎に角あれを駆除してくれたらイイから。ってかむしろあいつらが上を通っていったんなら俺はそれ全部捨てるから」 取り付かれたかの様にぶつぶつと言いはじめたイルカに、カカシはこれは…期待できそうにないよな…いや初めから分ってたけど、と立ち上がり台所と居間を遮っているガラス戸に手を掛けた。 これをあければ奴らがいる…。 背後にサスケも何時でも動けるような格好で構えるのが気配で解る。 いくぞ……! ああ…! 「!?カカシ先…」 ナルトと言い合っていたイルカがこちらに気付き、口を開く前にカカシはたんっ!とキレの良い音を立てて戸を開け放った。 しんとした静寂がその場を支配する。 途端、イルカがへんな悲鳴を上げながら部屋の隅っこ迄あっという間に下がってしまうのが尻目に見えた。 …その声やめようよ…イルカ先生…余計恐怖を煽るってのーーーー! 悲鳴に反応して早くなった鼓動を、戦場で培った忍びの不屈のコントロールで、なんとか動悸を押さえこみ台所へ足を進める。 「じゃ、サスケは流しの下、ナルトは食材のおいてある付近を捜索だ。見つけたら俺に言え、すぐに駆除する」 「…先生は探さないのかよ…」 「…ウスラトンカチ…」 じっとりとした目で見つめてくる部下にカカシは飄々と言い放つ。 「捜索と、駆除をわけると言う…迅速に対応出来るようにというチームワークだろうが…」 だって探してて、うっかり触っちゃったりとかしたら絶絶対やだもん。絶対に言えるはずのない理由はこころの中だけで呟いて。 「さすがです、カカシ先生!イイ作戦です!」 居間の方で、イルカが嬉しそうに叫ぶのを聞いて、部下達はしぶしぶ…カカシの言った持ち場へと移動していく。 それをカカシはうんうんと頷きながら見守った。 もちろん、生き物の息吹を感じる為に神経を研ぎすませる事も忘れてはいない。 冗談じゃなく…すぐに息の根とめちゃうもんね… イルカは居間でその動向を息をつめて見守っていた。ナルトもサスケも立派になってと親のような心境も入りつつ。 結構余裕があるのは、頼もしい背中が3つもあるせいかも知れない。 だが安心しきったイルカには最大の罠が待っていた。 「ちくしょう…いないな…」 「…あーっこれってば!ぜってーやつらの糞だってばよっ!」 「でかしたぞ!ナルト!奴らはその付近にっ…!」 ごそごそとそこらを捜しまわる音と共に、非常におぞましい会話が聞こえてくるが、やっぱりその場に居ないイルカには余裕があった。 が、背後に小さな、小さな気配。 やはり…こんな時は忍びの感性は非常に命取りになるといえよう。 へ?安全であるはずだった居間で…振り返ったイルカの見たものは… 「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!」 凄い大音量がイルカの部屋に…いやアパート全体に満ちた。 その音に驚いたのか、黒い物体は大きくその翼(羽)を広げすごい勢いで飛んで。 イルカの真横をあっと言う間もなくすり抜け、結構長いこと貼ってある…イルカのお気に入りのアイドルのポスターにすたりと止まった。 ! |
…ブラウザ閉…