|
「ありがとうございます!」
照らされる夕日の元で、ひょこんとしっぽを揺らして頭を下げるイルカに、なぜかカカシはどぎまぎした。 後ろの方では「これならあいつら全部跡形もねーよなあ…!サクラちゃん!」 「そうねーこれならね…」 「…あたりまえだろ…炎で焼いてやったんだから…な…」 などと部下が話しているのが聞こえるが…いつもは何かをしている振りをしながらも、耳を澄まして彼等の動向を逐一みているのだが、今のカカシにはそれさえ頭に浮かばない。 …それほどに夕日を頬に受けてにこにことはにかんで笑うイルカにしか視線がいかない。 なんか…凄くどきどきするんだけど… 笑顔が前よりもっとかわいらしく見えた。 心臓が心なしか痛い。 あれれ、何これ。ここに来る前はこんなにドキドキしなかったよな?だって俺には縁がないのかもとか思ってなかったっけ?俺…どうしちゃったんだ…? だってこの人男だし…そんな色気とは無縁の人だったし…。 やぼったいとか…馬鹿だとか…おかしな人で、おもちゃみたいでとかしか…思ってなかったじゃない。 気のせいだと思い込もうとしても駄目だった。鼓動は早くなっていく一方で、収まる気配等いっこうに見せないのだから。 なんか駄目だ、スゲー可愛いもん。もうこう…キラキラしてる…? 夕日だけのせいじゃない。 抱き締めたいとか、キスしたいとかそれ以上もやってしまいたいだとか思ってしまっている。 う…うそだろ…?俺ってこの人の事…好き…になっちゃったの? 狼狽してあせったって事実が変わる訳でもない。 そんな感情はまるでなかったはずだった。友人としての好意…そんなものだったというのに。 そんな短時間で気持ちがころりと変わってしまうものだろうか? ……あ…あれ? …もしかして…もしかしてだけど… イルカから視線が外せず、食い入るように見つめながらも一つの考えが頭に浮かび上がる。 治めようとしても治められない動悸。ココ数時間で覚えがある。 吊り橋効果ってやつ…?…マジでか! けれど…そう…それなら合点が行く。あのどうにもならない追い込まれた状況で、カカシはイルカに物凄いドキドキを体験させれられ、それを共有したのだから。 もともと好意を抱いていた相手ではあるから、それがより一層この騒動で強まっただけなのかも知れない。 けれどそれをがらりと、異性相手に感じるものに変えられてしまったのには驚くしかないが。 でも…ま、別に吊り橋効果でもなんでもいいや。 本当になんて御礼をいったら…とカカシの手をとりしっかりと握りしめてくるイルカに「そんな…大した事はしていません…当然のことをした迄ですから…」と真摯な眼差しで返し、微笑みながらそう思う。 今迄命を掛けた任務にでだってこんなことは…一緒にいた大切な仲間達に恋心を抱く事等まるでなかったのだから。 イルカだから、この天然のお人好しであるからこうなったと思った方がなんだか…凄くぴったりな感じがした。 運命とか…どうだろね。 黒いアレのお陰ともいえるこの運命。…いやそれはあんまり嬉しくないけど。 イルカの表情を見ていれば自分とそう変わらない想いを持っている事が解る。告白したところで結果は見えている。 ははは…愛が芽生えちゃったよ… 「イルカセンセ…」 うっとりとその名を呼んで、以外と柔らかいふっくりとした…頬に手を添えれば。うっすらと染まった目元に知らず口元を寄せていく。 途端、尻の当たりにギュとつねられた感覚があったかと思うと、漸く(忍びにあるまじき事だが…)周りに視線がいった。 ふんとつねった張本人であろう、サスケが鼻息を鳴らす。 何時の間にか…ざわざわと周りが騒がしく、このアパートの住人だろう人や、周囲から集まって来た野次馬の人々の垣根が出来ていた。 その中心でなんだか恥ずかしい事をやっているイイ年の…男の忍びが二人。 「…あー」 ちょっと我に返ったカカシの声にイルカもはっと周りに目を走らせ、状況を理解したのか…握っていたカカシの手を離し、真っ赤になった。 離れていく手が惜しいと思い、けれどその可愛いとしか思えなくなった仕種にまた視線が吸い寄せられるが… 「カカシ先輩…」 なにをやってるんですかと言わんばかりの…面を被った男が目の前に立ったのに、漸く状況を理解するのだった。 * 暗部達に連行されて里長の前に引き出されたカカシ達はようやく自分達が何をしでかしてしまったかを思いだす。 ああ…なんて単純なひと…そう思うが自分だって思いっきり…罠にハマっているしなあと思いなおす。 そういって二人の頭をぐしゃぐしゃとイルカは撫でていた。サスケもナルトも嬉しそうに、照れくさそうにそれを受けている。 撫でているイルカもにこにこと満面の笑みで、機嫌の良さも露に恩人達への感謝の気持ちが溢れていた。 それを見たカカシは、むかむかとする嫉妬の気持ちを押さえる事さえ出来なくなっている。想いを自覚した今…イルカを前にするといろいろなものがどうも狂うらしい。 面白く無い…なに蕩けそうな笑みしちゃってんの…! 大人気なくともはっきりとそう思うのだから…もういいでしょとばかりにカカシはイルカを二人から引き離した。 いきなりのことに、はて?ときょとんとしたイルカににこにこと笑って、じゃ…俺の家に案内しますから、いきましょうかね? そういうと「はいっ!」と居ずまいを正し、元気よくイルカが返事をする。 じっとりとした部下からの目線を軽くいなすが、油断ならないイルカから当然のようにいつもの上等文句が飛び出した。 「じゃあまたな!御礼といっちゃなんだが…また…ラーメン食べにいこうな!ふたりとも!」 ぎょっと目を見張る暇もない。そう言うのを阻止しようとした俺の努力はっ! 「いくいくいくってばよー!」 「…わかった…」 飛び跳ねて喜ぶナルトの頭を撫でたそうにしているが、それはカカシの腕に阻まれて出来ない様だった。 「出来たら俺とだけでいって欲しいってばよ!!サスケはどうでもいいってば!」 「…このウスラトンカチ…!」 「ん?二人一緒だと都合があわん時もあるよな?わかった!独りづつでもいいからな!開いてる時いつでも声かけてくれな!」 「りょーっかい!ってばよ!」 「…わかった。声かける…」 照れながらぶっきらぼうに答えるサスケに、カカシのイライラは頂点に達した。 ああああああ!もうっ!この天然! 天然だからこそ無邪気なモーションのひとつも解らないのだから、それはそれで気付く素振りも見せないんだから良いと言えば良いのだけれど。 これからこうやって…ずっとやきもきさせられるのかと思うと、堪らなくなってカカシはイルカの腕を引くと、横抱きにして抱き上げた。 「え?え?え?」 先程から、以前とはまるで違う反応しか返してこないカカシにうっすらと気付いたのか…戸惑うイルカを、 「ぎゃああああ!カカシ先生!抜け駆けにもほどが…!」 と叫ぶ子供達を無視して。 「じゃ行きましょう!」 あれの居ない(多分)俺達の愛の巣へ! カカシは力強く地を蹴って、窓を飛び出し。 二人の楽園…目指して掛けていくのだった。これからのバラ色の日々を想像して。 * …任務が終わっての帰り道… 何だかんだで随分と日は落ちて…遅い時間。 勘違いなのか本当なのか? |
…ブラウザ閉…