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手を引かれ、押し込まれて、ばたりと戸を閉められて。あまりに突然のことに日本はきょとりと目を丸くした。
すでに出合った時から、彼は酷く酔っていた。
一体どうしたのですと聞く前に、手を引かれていた。その熱い手の所為で一瞬言葉をなくしている間に、この部屋に押し込まれていた。
戸を後ろ手で、閉めたままの格好からまるで動かないイギリス。
どういうことだろうか?ここは眠る為に用意された部屋ではなかっただろうか。ぐるりと周りを見回した後、日本はまたイギリスに視線を戻す。顔は俯いたままでよく見えなかった。
濃い酒の匂いが鼻に付く。酒に弱い自分では到底飲めないだろう量を飲んでいるのだろうことがそれだけで解る。
一体どれだけ飲んだのでしょう…?
彼の酒癖が大層悪いのはギリシャや、ポーランドから耳が痛い程聞いているから知っている。良くニュースになったりするからということもあるが。
服を脱ぎ出したり、暴れだしたりする前になんとかしないと、と思ったものの。戸を閉め切って以降、イギリスはぴくりとも動かないものだから、気分でも悪くなったのだろうかと日本は心配になった。
「イギリスさん、大丈夫ですか?お水よろしければ持って来ますが…」
そう声をかけると、その身体がぐらりと傾いだ。
「あっ」
走りよってその身体を支える。
熱い。
酒のせいだろうか、その身体はとても熱かった。
その温度を感じた瞬間、胸の鼓動が早くなったのが解ったけれど、突き放す事等できる訳もなく、そのまま肩を貸しながらベッドに一緒になって腰掛ける。
だが大きく揺らした訳でもないのに、イギリスはその反動でなのか、日本にもたれ掛かって来た。
「え?」
またこれも咄嗟のことに受け身も取れず、そのまま二人してベッドに倒れ込んでしまう。
ひゃあああ…。
そう心の中で叫ぶ程、イギリスの顔が近い。
綺麗な金色のまつげが良く見えてしまう、そんな近い距離だった。だが、それ以上にぴったりと隙間なく密着した身体が、恥ずかしくて堪らない。
日本は自分の顔が、身体が火照るのを自覚した。イギリスの熱がまるで自分に移ったようにも感じた。
「い、イギリスさんっ!?そ、その…」
どもりつつも日本はなんとかそれだけ絞り出した。このままでは確実な失態を犯しそうだったからだ。
だが、押し返そうとした手は取られ、柔らかなベッドに押し付けられた。
「え…?」
体重で押さえ付けられているようで、少し身体が竦んだ。けれど、それ以上に喜びが勝っていた所為で、アメリカに襲われた時のように、そのまま投げ飛ばすと言う事はなかった。
暖かな体温は次々と自分に流れこみ。
イギリスの顔は逆光で見えず、表情さえ全くわからない。日本は自分の気持ちが溢れてしまいそうで怖かった。
「イギリ…」
もう限界だと、口に出して呼び掛けた時、下半身ばかりで感じていた熱が。暖かさの全てが日本を包み込んだ。強く抱き締められている。耳もとの吐息が、荒い息が堪らなかった。
だが、日本の理性が常識で止められている間に、あっさりとイギリスはそのどうしても越えられなかった壁を超えた。
酒の力を、借りて。
「…好きだ」
ぼそりと呟かれた言葉。
吐く息は酒に塗れていた。けれど、そのせいで火照った身体の熱は酷く高く感じられた。
「好きなんだよ、にほん…だからっ…」
ぎゅうと抱き締める力が強くなる。
「あ…」
イギリスさんも私を。想っていてくれたんですか。
嬉しさと驚きで震える手をその背に廻した。
自分より大きい背中が、酔っぱらい子供のようになっているのに、何故か頼もしく感じられた。
…先を越されてしまうなんて。
そんなことは絶対にないのだと、自己完結で永遠に平行線だと思っていたそれはこんな簡単な事で片付いてしまった。
「…本当に可愛い人、私も大好きですよ」
力を込めて抱き返せば、猫のように擦り酔ってくる。
今日ばかりは、エロ大王の称号は返上していた様だ。
譲れない愛の成就の為に…。
その数秒後にばたりと開かれた扉を怨むのはお門違いなものなのか。
あっという間に引き剥がされてしまい、まるでなかった事の様にされてしまっては。実は、ホントはハッピーエンドなんて、酔っ払いの挙げ句、タコなぐりの憂き目に逢った告白した本人が知らないのはどうしたって当然で。
けれどやっぱりハッピーエンドでめでたしめでたし?
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