不適な顔で、いい放てば…髭の眉がぴくりと動いた。
…くく…おまえばっかり幸せでも俺は楽しくないんだよ。俺も幸せになりたいもん。
ま、これは正攻法じゃないって認めるけどね。
「男だろうが関係ない、つっこんで…揺さぶってめちゃくちゃにして、犯し殺しちゃうかもねえ」
笑いながらいった俺の目にはもちろん嘘はない。
髭の眉はますます濃い皺を作っていて、俺は笑みを深くする。
あははははは!
おかしいったらありゃしない。
俺がもし…そんな状況に陥ったら迷わずそうするだろう。
それはもう当然のように。
二人きりでの死線。
ぎりぎりでの命のやりとり。
背を守る、息遣いやその温もり、全てが俺を煽ってやまないだろう。
全てが終わった後、やることなんて一つしかない。
種を残すという…本能等俺は無視して、興奮のまま…男にむしゃぶりつくだろう。
生存本能さえ揺るがすこの思いに勝るものはない。
そんな確信がある。
どうしてこんなに焦がれているのか…まるで解らないくらい。
ま、アレ程平凡に見えて、アレ程非凡な男はそうそういないと思うけどね〜?
はは、みんな鳩が豆鉄砲食らったみたいな目をしてるー。
声もでないの?
そんなにびっくりした?
まあ当然かあ…写輪眼のカカシが男に惚れてるなんてそりゃビッグスクープだよねえ…?
おんなしか抱いたことがないとかいってる癖にさ。
…里がうるさくいう…餓鬼も絶対に生まれないしね。
ま、俺はホントのとこ子供なんて欲しくない。自分の血を引いている子供なんて…うわわ、寒気がするもん。
だから、実のとこ…この天からいきなり振って沸いたような想いは、非常に俺にとって好都合だった。
いろんな意味で運命だと思ったね。
けど、やっぱりこの稼業って因果だよねえ…壊したくなる衝動も同時だなんてさ。いやいや、ちゃんと大事にするつもりだけどね?それでもやっぱ成人した男子が思うことなんて一つじゃない?
…根気よくお近づきになって…それでも今迄俺は良く我慢した方だと思うのよね。
相手に気に入られるように振る舞ったり。
思いを自覚した時からすでに2年ぐらい経過してるもん。まあ気付く迄1年くらいかかったのもあるけどさ。
そこらはしゃーない。
男に恋することって事体…俺の頭になかったんだもん…御愛嬌御愛嬌!
でももーいま結構限界なんでいわしてもらいます。
「うん、そーよー吃驚したー?でもお前らもよく知ってる人よ〜」
にこにこと笑って、上機嫌だという表情を見せながらいえば友人達は顔を見合わせる。
髭はとうとう耐えきれなくなったのか、おい、カカシ!とたしなめるように俺の腕を引いたけれど。
ここでとめる訳ないじゃない。
お前だって気付いてるんでしょ?
「受付とーアカデミーの先生も兼任してるの〜」
途端、いい加減にしろとばかりに強く引かれた。
もう…うっとうしいよ。俺の長らくの…思いを知ってる癖に邪魔しないでよ。
うるさいなとばかりに、その腕を振払って俺は言葉を続ける。
「そう…鼻の頭に傷のある…イルカせ…」
だんっとテーブルを叩いた凄い音と、それの衝撃で皿やコップが跳ねたり倒れたりする音が後ろの席から響いた。
そして人が立ち上がる気配。
その反応に…俺は、嬉しくなって…今すぐ向き合いたかったけれど…振り向かなかった。
後ろの立ち上がった男を目の前の友人が凝視している。
そりゃもう、絶句といったかお。
全部いえなかったけど…あそこまでいってたら解っているよね。
結構有名だもんね、火影様お気に入りの中忍。
代が変わっても…それは同じだったりして。いつまでこきつかわれるのかねこのひと。
そう思っていれば、予想していたこととは別の事がおこっちゃってて。
俺の熱烈な発表を…しらんぷりでこっそり受けた男は無言で脇をすり抜けていく。
いつも笑っている、かわいい…顔は深くふせてて、よく見えなかった。
あれ、一声掛けてくれないの?
バカヤロウとかいって…殴りつけてくれるかと思ったのに。アカデミーで生徒達によくやっているように。
もちろん俺はすぐさま席を立ち上がって先生を追い掛ける。
「今日は先にごめんね〜」
ひらひらと手を振れば、友人達は呆然とした表情のまま手をあげた。
立続けに起こる出来事についてけてないみたい〜まま、酔ってるとはいえあの人の気配にも気付けなかったのはおまえらにも問題あるデショ。
髭は気付いてたみたいだけどね。だから止めようとしたってことも解っててやったんだけどね。
…あら、髭はむっつりとして、手をあげる気配もないよ。
けどね、お前が心配してるようなことしませんよ?俺だってあんまり無茶はしたくないし、しないよ。
こんな平和な里の中で。
本能がどうとかいうようなとこじゃないでしょ。
あのひとが欲しい気持ちはほんとだけど、無理強いするのは嫌なのよ。
これでも。
ただ…これ以上の関係にいけなくて…行き詰まっちゃってるから、ちょっとした背押しみたいなもんなのよ。
ま、ちょっと反則気味だけど。
とと、走って、戸をあけて、閉めて、怒り肩でどかどかと歩いていく男の背をおっかける。
ふりむけ、ふりむけと念を込めるけれど中々振り返ってはくれない。
解っている癖に。
どうしてそう、いけずなのかな。
もう告白だってしてるっていうのにさ。
ここが戦場ならよかったのかな。
そしたら、あんたをぐちゃぐちゃにしても、許されるかも知れないのにね。
いや、許されなくても俺に後悔はきっとない。
本能にさえ逆らう、この衝動の正体を暴いてみたい。
不埒なことを考えていたのがばれていたみたいに…いきなり先生がぴたりととまった。
そして、凄い勢いで振り返って、俺の胸ぐらをがつりと掴んだ。
「貴方という人は…」
わなわなと怒りのあまりか肩が揺れている。
いつものトレードマークの頭のしっぽも。
顔も怒りのあまりか…酒が入っているのも手伝ってか、真っ赤で…。目元もほんのり朱に染まっていて…閨での男の想像を掻き立てる。
もうそんな想像なんか…山程してるし、何度だって抜いてるだけども。
それだけじゃ足りなくなっちゃってさ〜。
なんだろーこういうこと全部読まれてるんじゃないかなと言うタイミングで…ひゅいと拳が見舞われたけど俺はそれを避けた。
撲られてやる義理は…あるかもしんないけど、俺の気持ちも察して欲しいもんだからさ。
このひと多分不敬罪覚悟でやってるもんだから、ちょっと質が悪いよね〜!
「っつ!」
ぎりぎりと睨み付けてくる視線が心地よいね。
あんたののらりくらり避けとけばいいでしょうみたいな戦法にはもう飽き飽きなんだよね。
「いまさらでしょー?」
そういって微笑めば、先生はますます激高した。
だけどこれ以上オレも怒らせるつもりなんてなかったから、素早く掴まれている胸ぐらをはずして、その手を後ろ手にとった。
んん?あれ、ちょっと逆効果だったかな。と思いつつも腕は外しませんけど。
だって逃げられちゃやだもんね。
しっかし…人の話を聞きましょうとか通信簿に書かれてたタイプじゃない?この人。今は書いてる方だろうにね。まあそこがかわいいんだけど。
「なんにもしないよ。今迄だってそうだったでしょ?」
そっと手を拘束したまま、柔らかに抱き込んで…耳もとに吹き込めば、身体が大仰に反応した。
あらやだ、何か期待してたのかな。
無理矢理抱かれるとでも思ったかな。
まああの話題を全部聞いてたなら当然か。
あの下忍が先生の受け持ちじゃなかったことはこっちで調べ済だったんだけど…やっぱり不快だったよね。
でもね、ちょっとチャンスかなって思ったの。
だから俺は言葉を続けた。
けどね、だいぶ前から俺はあんたに気付いてたでしょう?
もちろんあんたもそうでしょう?俺が気付いてたこと知ってたでしょう?
そして俺の言葉を一言一句聞き逃さないように耳をそばだててたでしょう?
…知らないとでも思ったの?
おんなしか抱かないといった瞬間、あんたは息を呑んだよね?
それが俺にとってどれだけ嬉しかったか解る?
あんたしか抱かないといった時の…大袈裟すぎる程の動揺もどれだけ嬉しかったか。
あんたにわかる?
全部ほんとのことだよ?
あんたへの思いは本能にだって勝るよ。
抱く力を強くすれば、腕の中の身体は身じろいだ。
俺は弱くなっていく抵抗ににやりと笑った。
唇くらいは頂けそうな感じかな。
でも、ここは辛抱強く待つつもり。
だって…ねえ?この態度…脈ありまくりだと思わない?
「そんなわけだから。はい」
ぱ、っと力を緩めると姑く呆然としていたけど、はっと驚いたような顔をして、先生は跳びずさる。
毛を逆立ててた猫のように、こちらを伺う気配を見せていたけれど。
「おやすみなさいね」
そう安心させるようにゆっくりといえば先生は一瞬なんとも言えないような表情をみせた。
困ったような、怒っているような。
そんな…今迄になかった隙のある表情。
張り付いた、拒否の笑顔なんかじゃない、ね。
ほら、何かが先生の中で変わったみたい。
俺の本気を知ったからかななんて…自惚れてみたり。
沈黙の中…先生は何もいわず…踵を返し。振り返りもせずに…闇夜の中を駆けていった。
俺はその背が見えなくなる迄、見送った。
あんたを今すぐにでも抱きたいのはほんと。
でもここは戦場じゃない。
だから抱かない。
ここでは1人の人でしかないからね。
獣じゃーないから。
まだ狂気にも捕われてないからね。
ただ、抱きたいだけの本能なんてしまっておくよ。
でもあんたの返事次第ではどうとでもなるんだけーどねー。
いろんな道がおれたちをまってる訳。
せめてナルトが帰ってくる迄にこの思いは成就させときたいかなとは思ってるけどね。
取り合えず。
この生存本能にも打ち勝つ…想いを…どうしようか?