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「…本当にやってるかなーあの馬鹿リス…」
こつこつと長い廊下を早足で歩きながら、アメリカは一人ごちた。しかもいつもイギリスがやっているような笑みで、によによと笑いながら。
本当にやったいたら馬鹿以外の何者でもないと思うが、それをやってのけるのがイギリスだから、馬鹿と呼ぶ事になんの異論もない訳で。
誰が、君と日本をくっつけるような真似をするっていうんだい。日本は僕のモノなのにさ。
今度は悪い顔にすっかりなっているアメリカだ。悪役にしか見えないそれは誰にも見せられるものでもない。
アメリカがイギリスに教えた方法とは、当然ながら告白とは縁遠いものであった。
だが、至極、単純明解なこと。
その方法とは。
酒を日本の前に出る前に飲め。と言う事だけだった。
誇大広告この上ない、嘘を並べ立て、愛の為だと日本の為だと、誘惑という名の甘い蜜を次々と流し込み。溺れるイギリスはすっかりアメリカの言う事を信じた。
もう後がない男を丸め込むのは簡単だったのだ。
しかも感謝されまくり、おまえは本当にイイ弟だなあと涙ながらに喜ばれた。そんなイギリスをとてもキモイと思ったものの、これから逢う目を考えていれば自然と同情の目になるのも仕方あるまい。
どうしたって、失敗する作戦なのだし。
「…ふふふ…目に浮かぶよ…」
酔って野獣と化した、変態イギリスに襲われ、キモノを剥がれ、破廉恥な格好になっていく日本。
いや、やめて、イギリスさん!
げっへっへ、日本、観念しろ…今日こそピーしてピーしてピーしてやんぜぇええ!
酔っぱらった時のイギリスはそれはもう質が悪い。
各国からどうにかしろとこちらが言われた事もある。知るかと思いつつ、文句だけはちゃっかり言いに行ったら、あまりの馬鹿さにこりゃ駄目だと思ったのも記憶に新しい。
風評は日本の耳に聞こえているだろうが、襲われる当事者となるのとはまた、違うのだから。
そりゃあもう幻滅だろう。
いつもは紳士と誇っている男が、豹変するのだから。まあ、紳士と呼ばれる国のルーツは所詮海賊なのだから、当然ともいえるのかもしれないが。
目に沢山の涙をうかべ、助けてと叫ぶ日本を助けるのはもちろんアメリカだ。
今すぐ助けてあげるよ!日本!
理性を失ったイギリスに押し倒され、必死に逃げようともがく日本。震える指先が哀れで仕方ない。
アメリカさん、アメリカさんっ!いや!助けて!!
必死に抵抗し、自分の為に操を守ろうとする日本の姿を想像する。
だが!
変態の毒牙になどかけるはずもない。綺麗な彼を、傷物にしていいのも自分だけだ。
本当はイギリスが手を触れるのだって嫌で堪らないのだけれど、日本に恩だって売りたいのも本音だから、ここはある程度まで我慢することにしていたちゃっかりなアメリカだ。
ヒーローはいつだって最高の場面で、ヒロインを救っていくのさ。
悪行を止めるべく、日本を救うべく…僕は飛び込む。
大丈夫かい…日本…僕が来たからにはもう何の心配もないよ!
残るのは、馬鹿の屍。
涙目で日本は頬を染めつつ、アメリカに飛びつき感謝の意を述べるのだ。
ああ、アメリカさんありがとうございます…だいすき…!やっぱりアメリカさんだけが私の頼りです…すき…
。
「ああああ、最高だね!いまいくよっ日本!!」
アメリカはまさに理想とする場面を思い浮かべつつ、扉を開け放ち物音のする場に飛び込んだ。
「にほーんっ!俺がいるからもうだいじょうぶだよ!!変態イギリスは僕が………!?!」
意気揚々と、扉を開けた途端。
飛び込んで来た情景と言ったら、なかった。
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