「愛の病も酒次第-1」


「べ、別にお前のためじゃないんだからなっ!」

 どーんと指差しながら言い放ったイギリスの顔はすこぶる赤かった。
 だが、いつもの見栄っ張りというか、まさにツンデレ発動なのは疑うべくもない為、なれっことばかりに日本は頷く。
「…そうですね、私のためではありませんね。けれど…それでもやっぱり嬉しいです。ありがとうございます」
 肯定しつつも心を込めた礼をいえば、ち、ちちちちがうっていってんだろおおっと叫びながら、何故かイギリスは数歩後じさった。
 別に日本がにじり寄った訳ではない。ただ、礼の為に深く腰を折っただけだった。
 そのぶん二人の距離は数cmは近くなったので、その分だけ下がった所を見ればそうなのかも知れないが。
「だ、だ、誰がお前の為なんかにするってんだっ、その自惚れはなんとか、し、したほうがっいいかもな!」
 腕を組み、明後日の方向を見ているものの、顔は林檎のように赤い。今にもやかんのようにぴーと煙りでも吹きそうな勢いだ。
 そんな顔で、どもった口調でいわれても。幾ら鈍いと言われる日本とて、嫌われている訳ではないと、ある程度の好意はもたれているという事くらいは解る。
 ただ、素直になれないだけだということも。
 しかもそんなイギリスを可愛いとしか思えない自分にも困ったものだと思う。…年下にはどうもとことん甘い様だ。
 何より、一度は懐に入れた相手であろうことも強くあるだろうが。
「御忠告ありがとうございます」
 くすりと笑いながらそういうと、お、おう、感謝しろよと再度明後日の方向を向いたまま言ったイギリスはの顔は、何故か俯いて下を向いてしまう。その顔は赤いままだった。
 …なにか不味い事でもいいましたかね…?
 すっかり沈黙してしまったイギリスになんと声を掛けようか、日本は迷う。
 下手な事をいってまた、怒らせるのも得策ではないと思う。
 そんな風に日本が考え倦ね、決め兼ねている間に、イギリスは真っ赤な顔をゆっくりと上げた。何か言いたげに口をひらいたその瞬間明るい、陽気な声が日本に掛けられた。

「にほん!」
 イタリアが掛けてくるのを見て、日本の顔はほころんだ。
 幼い弟をもったような、そんな気持ちにさせてくれるイタリアだ。自分の気持ちをストレートに伝えてくる。そんな彼が日本はとても好きだった。イギリスとは又、別の意味で。
「イタリアくん」
 イギリスを持て余していた日本にとっては、助け舟のようにも見えたから余計かも知れない。明るく返事をしてそちらを振り返れば、こちらもとても嬉しそうな顔でイタリアが抱き着いて来た。
「にほん!にほん!!ドイツがよんでたよお!はやくいこっ」
「なっ!」
 その言葉にイギリスは過敏に反応する。
 先ほどまでの沈黙をよそに、日本を何処へ連れていくつもりだと大声を上げた。先ほどのもじもじなど何処かへ飛んでいってしまったかのようだ。
 きょとりとイタリアは勢い込んだイギリスの方を不思議そうに見たけれど、次に出た問いかけは日本に向いていた。
「ねえ、日本はまだイギリスとお話する?」
「…いえ…私はもう特には…」
「お、おいっ、待て日本!俺はまだある!だから…」
「え?そ、そうなんですか?」
 他にまだ何かあるというのだろうか?

 


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