| 今日も平和な里に、響き渡るは元気な少年の声。 だがそれはいつものごとく、事件の幕開けの合図だった。 「恋人ならいるってばよっ!」 単純構造頭のナルトにしてみれば、ただの見栄だった。 なんだいないのと、呆れに近い表情のサイからなんとも馬鹿にしたような雰囲気が伝わって来たからに過ぎなかった。 多少は心の奥底に眠っていた、『何か』が刺激された感は否めない。 けれどやはり、少年の目一杯のいつものノリによる精一杯の抵抗だった。 だが、当然ながら周りの反応は凄かった。 「うそでしょっ?!ナルトに…恋人っ!?」 生っ粋の、同性愛(少年限定)にだって興味のある…そんなサクラを目の前にして言う事自体がすでに間違っていた。 そんなこと当の本人は知らないに決まっているものの、ここは是非つっこんでおきたい所だ。 それより、本当の想い人の前で堂々といってどうするつもりなのかと、こんこんと一時間程問うてみたいものだが、すでに本人は目を白黒させていたので許してやりたい。 あ、なんか俺やっちゃったね、コレ。という風な、そんな顔面。 「だれっ誰なのよ!?すぐ、今すぐ答えなさい!そうしないとサイも納得しないんだから!!」 一応ナルト自身から…好きだとか告白してるはずの少女は、兎に角にも容赦がなかった。将来は大声で御近所に噂を吹聴しまくるような…そんなおばちゃんの勢いがあった。 肩をひっつかまれてがくがくがくと壊れた人形のように首を振りまくることしか出来ないナルト。抵抗と言う言葉はサクラの前では兎角無意味であった。 問題発言を投下した本人…サイは隣でにこにこと笑っている。 何を考えているのかも解らないようないつもの笑みで。 どうしてもともとこんなことになったのだか、今さら思い出していても遅い。 けれど急速にぐるぐると回り出したのは、つい先ほどまでの他愛のない会話だった。 今日も修行を兼ねた任務に出ていく為に、ヤマトに会う前に合流した三人は、集合場所に歩いていく合間、楽しく(少し語弊があるかもしれない)話していた。 最近特に変わった事はないかだとか、新しい技がどうとか。なんとなくな他愛のない話から始まったと思う。だが、いつの間にかサイの恋愛遍歴になっていたような。 そうだ、サクラが根掘り葉掘り聞き出していたのだ。嬉々として。だが、結局のらりくらりとかわされた挙げ句、お鉢がナルトにまわって来た。 ナルト君だったら、恋人の一人や二人とは経験有るんだよね? 意味深な笑いとともに、意味深な言葉を零したサイに、ナルトは反射的に叫んでいた。 俺って馬鹿だよね。知ってた。うん、知ってたんだってば!! 自分を今さらながらに攻めたって状況は変わらない。 すでにナルトはサクラの勢いにたじたじになっている。 しかもちょっと泣きそうだったりする。 あきらかに好奇心のそれは、ナルトの想い等真っ向から否定している。 しかし、この話題を全面に肯定したのは自分なのだから、どうしようもない。 そう、こうなってしまったからには、後には引けなくなっていた。 今から『いやー嘘でーす!』とかいったり、『相手は秘密!きゃー恥ずかしいっ』とかいっちゃって誤魔化したとしても…サクラにボコにされ、サイには童貞(意味は良く分かっていない)のレッテルを張られてしまう。 随分と体も心も成長した今。すっかり男の矜持も育って来てしまっているからこそ。 こんなところでも仲間に認められたいからこそ。 それは矜持ではなくただの見栄だといってやりたいが、頭にすっかり血が登っているナルトには届かなかった。 だから、ナルトは心にふと浮かんだ名前をそのまま、叫んでしままった。 その名前だけは駄目だったのに。 サクラからボコボコは決定だったのに。 だが、浮かんでしまったものはしょうがなかった。 自分を一番初めに救ってくれた、大好きな恩師の名を。 「いっイルカ先生だってばーーーーーーーー!!」 本当の事件の引き金になる、その言葉、人物の名を。 続… |
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