「俺、ホモは大嫌いなんです!ですからお断りです」

にっこりばっさり。

はたけカカシ一世一代の告白はそんな一言で斬りすてられて…。
淡い恋心は空しく砕けちったのであった……。


………
……………

…で終わるような男ではないのがまあ、ミソなのかもしれない。
第一ここで終わってしまっては、はじまったばかりだと言うのに話も続かないからカカシ先生には頑張ってもらわないといけなかった。

けれども。

カカシはあまりのショックに言葉が約数秒間、まったくもって出無かった。
今迄、どんな困難な場面でも冷静に対処することが出来た男にとっては初めての体験だった。
頭の中はまさにまだ新品のホワイトボードのように真っ白で今なら、落書きし放題で。いや、洗濯したあとの真っ白い青春のTシャツの様だとでもえばいいのだろうか。
兎に角、ダメージは中々に凄まじかったようだ。

だってだって?
さっきまであんなにイイ雰囲気だったのに?
おかずもあーんってしあえる仲ではなかったのだろうか?

絶対に両思い。

そう信じて疑わなかったから、カカシは生まれてはじめての人生勝負とも言える告白に踏み切ったのだ。
男に…同性に告白するのだから、それ相応の覚悟と言うやつはやはりいる。だって男の伽なんて気持ち悪いと今迄切り捨ててきてたものだから、その手の人たちにげろげろ、一昨日おいでとかまでしてしまっているものだから。
けれども…どんなかっこうがつかなくっても、カカシはイルカに告白したかった。
すきになってしまったものは仕方ないのだし。
そんなもたもたとしている間に、イルカが他の女や男に告白され…付合ってしまうことを考えれば、自分のプライドはどうでもよかった。
第一…むこうも、イルカも同じように自分のことを好いていてくれていると信じていたし…。

そう…カカシとしては清々堂々と里公認のラブラブ馬鹿ップるになりたかったのである。
なのに、結果は…ホモは大嫌い、というばっさりな言葉で。
カカシがどうのこうの言うレベルでは無い。
そう、性別から引っ掛かっているのだ。
それは産まれ落ちた瞬間から決まっていることなのだからカカシには変えようの無いことで…。
そりゃまあ、変えようと思えば今のこの御時世いくらだって変える事は出来る。けれどカカシは決しておかまなどにはなりたく無いし、第一ヤられるより、イルカをヤりたい方だから、性別を変えてしまうのはちょっと、いや、かなり御遠慮したいのだった。
にこにこ笑っているはずの…イルカには取り付く島さえ見えない。

いやいや、まけるなカカシ先生、ここで終わってしまったらお話になりませんから。

そんな天からの喝が効いたのか…カカシは真っ白な頭になんとか色を戻しはじめた様だ。
だってここで終わりたくはないのだ。
どんなことをしたってイルカと一緒になりたい。恋人になりたいのだ。
その想いは果てしなく強かった。

…いや、まてよ?それなら、自分が男色ではないことをアピールすればなんとかなるかもしれない。
おれはイルカ先生だから好きなのだと。

そうだそこだ、ちょっと擦れてる感じもするけれど兎に角、頑張ってカカシ先生!とこっそり成りゆきを見守って居た回りの心の声にも押され。

ようやくカカシは現実に戻ってくると、早口にイルカにまくしたてた。

「そそそっそ!そんな!俺はほもでなはくて…イルカ先生だけが好きなんですよ!?男なんて大嫌いです!でもイルカ先生が良いんです!だか…」
いや、だからそういのをホモっていうんじゃないかなあと思うけれど…言ってる間にイルカの手が迫ってきたかと思ったら、むぎゅりと顔を引っ付かまれ、ごきりと音をたてて…カカシの首は変な方向へ折れ曲がった。
良かったね。現実じゃ無くて…現実だったらこの世とおさらばでしたよ?なんて微笑んでる場合では無く。
「ここが何処だと思ってるんです?俺迄ホモにされたらどうするんです!」

…もうやめてええ…

なんて周囲が関係ないのに泣きつきたいと思ってしまう程、カカシの首はさらに変な方向へ持っていかれている…気がする。いや気じゃ無くてそれは事実でしかなかったのだが。
イルカのこめかみに青筋がぷつぷつと浮かび上がっている所を見ると相当怒っているらしい事が読み取れる。
いやいや、張り付いた様な笑顔も充分恐い。

「…ごめんなさいごめんなさい!ギブギブ!!」
カカシが泣いて謝れば、ぱ、と手を離し、イルカは汚いものでも触ったかとでも言うようにベストに何度も手をこすりつけた。
そんな黴菌じゃ無いんだからそこまでしなくっても…いいのではないだろうか。
そんな思いも空しく、それでも飽き足らず、イルカはお手拭きでも手を拭っている。
ごしごしと何度もこすって…相当の念の入れ様だ。
首が明後日の方向に向いているお陰で、カカシがその光景を見なくて済んだのは…せめての救いなのかも知れない…と先ほどからちらちらとその光景を盗み見ている店の親爺は思った。

「…兎も角!そんなお話でしたら俺は帰らせて頂きます!これで二度と御会いする事もないでしょう、お元気で」
一見、爽やかすぎるくらいの…にこにこと張り付いた笑顔のままで…イルカは席を立ち上がる。


続…


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