ねえ
貴方と過ごすこんな時間は
まるでぬるま湯に浸かっているみたいだって思うんです。
貴方は平和であったかい、里の日向の部分そのもの。
暗闇にいた俺には少々刺激が強すぎる。
居心地が悪い気がずっとして居たと言うのに。
貴方は抵抗もなく俺の中に入ってきて。
驚く程、肌に染み込みあっさりと馴染んでしまった。
ああ、いけない。
手放せなくなる。
このままじゃ
きっと、ダメになる。
忍びの俺はきっと死んでしまう。
この自分を包み込むこの生温い水に…殺気や、尖った心や、歪んだ思いも…人殺しの技も全部、俺の中の醜いものはすべて溶け出していって。
使い物にならなくなる。
貴方の腕の中で、生まれたてみたいに真っ白になる。
そう、まるで羊水の中から、今この世に生まれでた赤ん坊のように。
俺は強くなければ…ならないのに。
そうでなければ、生きている意味等ないというのに。
だめだ。
今すぐ、捨てなければ。
貴方の元から離れて、またもとの世界に戻らなければ。
俺はだめになる。
そう
思うのに抜けられない。
肌を水面から上げてしまえば、少し肌寒さを感じるけれど…浸かっている限り、寒さなんてまったくない。
むしろ暖かくて、けれどものぼせ上がる程では決してない。
だからこそこうしてずっと、浸かっていられるのだけれど。
なんとも心地よくて。
ずっとずうっと浸かっていたいと。
ゆらゆらとたゆって、いたい。
ぬるいぬるい貴方のその懐の中で。
-了-