ほんの…小さな頃。
虹の上を歩けるものだと思っていた事がある。
あの大きな美しい七色のアーチを駆け登ったら、きっとお日さまがあるのだと思っていた。
登るのはとてもとても大変だけれど。
それを乗り越える事ができたならば…きっと。
いなくなってしまった…両親達にあえるのだと。
そう信じていた。
今思えば酷く馬鹿らしい…滑稽な事を平気で思っていたものだ。
虹はただの光の屈折で目に映るものでしかなく、その上を渡っていく事等できるはずも無い。
夢の国へ続く七色の橋など…そんなものは何処にも無いのだ。
…子供の想像力にはほとほと頭が下がる思いだ。
大人になり、子供達の相手をしていると、突飛な事ばかりいうと笑う事しかできなかった。
けれど、それはごくたまにだが、非常に正鵠を得ている時が有る。
無茶なことばかりのなかに真実がまじっている。
頷かずにはいられないこともある。
子供とは不思議なものだ。
そして…もう今の自分にはないものだ。
うらやましいとも思えない。
…そういえば火影になるとかいってたようなこともあったか。
息巻いて、騒いで。
それでも最後には独りぼっちになるというのに、むなしくなるというのに。
そうしなければ、自分を支えられなかった。
かわいそうな自分を。
だから小さなあのこがまったく同じ事を叫んでいるのを聞いて胸が熱くなった。
自分と重ねたのは愚かな事かも知れない。
けれど孤独な背は一緒だったから重ねずにはいられなかった。
あのこは自分と違って強い。
どんなにさげずまれても決して膝を折らないのだ。
そして自分とは違ってあのこにはちゃんと才能がある。
それに気付いたのはほんの最近のことでしか無いが。
叶えられなかった夢を叶えてもらう。
それは酷く嬉しい事の様に思えた。
どんな叶わない夢でも、それに向かっていく姿は美しかった。
空しくても、膝を折ろうとも諦めなければ良かったのか?
この今でさえも?
そうすればあの虹ものぼれたのだろうか。
-了-