「御霊」



もう、父は跡形もなくなくなってしまった 。


燃え残った骨の欠片を、俺は誰にも気付かれないように、一つ手にとった。
そして誰にも気付かれないようにそれを口に運んだのだ。

ゆっくりと噛み締めたら、がりりと、軽い音がした。

こんなもので身体が、肉が支えられていたのだろうかと、思う程に。

かんたんに。
砕けてしまう。


残りのちりのような骨達が、さらに音もなく炎の中に消されていく。

ちいさな粒子のかけらさえ残さないように丁寧に消されてしまう。
ものの数分と経たぬうちに…統べてなくなってしまった。



とうとう、父は跡形もなくなくなってしまった。



けれど、胃の中へ落ちていく、父の欠片はまだ、ある。

おれのからだのなかに。


父の一部だったもの。
そのうち、それは胃の中でゆっくりと溶けて、ゆっくりと栄養として吸収され。

おれの一部になっていくのだろう。



おれを形作る、ほねやにくや、ちに。







もう、母は跡形もなくなくなってしまった。



燃え残った骨の欠片を、また俺は誰にも気付かれないように、一つ手にとった。
そして誰にも気付かれないようにそれを口に運んだのだ。

ゆっくりと噛み締めたら、がりりと、軽い音がした。

こんなもので身体が、肉が支えられていたのだろうかと、思う程に。

かんたんに。
砕けてしまう。


残りのちりのような骨達が、さらに音もなく炎の中に消されていく。

ちいさな粒子のかけらさえ残さないように丁寧に消されてしまう。
ものの数分と経たぬうちに…統べてなくなってしまった。



とうとう、母は跡形もなくなくなってしまった。



けれど、胃の中へ落ちていく、母の欠片はまだ、ある。

おれのからだのなかに。

母の一部だったもの。
そのうち、それは胃の中でゆっくりと溶けて、ゆっくりと栄養として吸収され。

おれの一部になっていくのだろう。



おれを形作る、ほねやにくや、ちに。








俺の中で二人は生きる。


父から溢れ落ちた命に。また、父が還っていく。

母から零れ落ちた命に。また母が還っていく。



魂はめぐり、また還っていくのだろう。

そして新しいものに生まれ変わって、どこまでも続いていく。
俺がちりとなっても、また。


…受け継がれ、還っていくのだろう。


それを寂しいと思う事なんてない。
共にいるのだ。

そう思うだけで心が弾む。

ずっとずっと一緒だ。離れる事なんてない。

この世の有る限り、永遠に続いていく。生命の連鎖。

形のない、この。




ああ、きっと貴方とも。

 

…ブラウザ閉…