もう、父は跡形もなくなくなってしまった 。
燃え残った骨の欠片を、俺は誰にも気付かれないように、一つ手にとった。
そして誰にも気付かれないようにそれを口に運んだのだ。
ゆっくりと噛み締めたら、がりりと、軽い音がした。
こんなもので身体が、肉が支えられていたのだろうかと、思う程に。
かんたんに。
砕けてしまう。
残りのちりのような骨達が、さらに音もなく炎の中に消されていく。
ちいさな粒子のかけらさえ残さないように丁寧に消されてしまう。
ものの数分と経たぬうちに…統べてなくなってしまった。
とうとう、父は跡形もなくなくなってしまった。
けれど、胃の中へ落ちていく、父の欠片はまだ、ある。
おれのからだのなかに。
父の一部だったもの。
そのうち、それは胃の中でゆっくりと溶けて、ゆっくりと栄養として吸収され。
おれの一部になっていくのだろう。
おれを形作る、ほねやにくや、ちに。
※
もう、母は跡形もなくなくなってしまった。
燃え残った骨の欠片を、また俺は誰にも気付かれないように、一つ手にとった。
そして誰にも気付かれないようにそれを口に運んだのだ。
ゆっくりと噛み締めたら、がりりと、軽い音がした。
こんなもので身体が、肉が支えられていたのだろうかと、思う程に。
かんたんに。
砕けてしまう。
残りのちりのような骨達が、さらに音もなく炎の中に消されていく。
ちいさな粒子のかけらさえ残さないように丁寧に消されてしまう。
ものの数分と経たぬうちに…統べてなくなってしまった。
とうとう、母は跡形もなくなくなってしまった。
けれど、胃の中へ落ちていく、母の欠片はまだ、ある。
おれのからだのなかに。
母の一部だったもの。
そのうち、それは胃の中でゆっくりと溶けて、ゆっくりと栄養として吸収され。
おれの一部になっていくのだろう。
おれを形作る、ほねやにくや、ちに。
※
俺の中で二人は生きる。
父から溢れ落ちた命に。また、父が還っていく。
母から零れ落ちた命に。また母が還っていく。
魂はめぐり、また還っていくのだろう。
そして新しいものに生まれ変わって、どこまでも続いていく。
俺がちりとなっても、また。
…受け継がれ、還っていくのだろう。
それを寂しいと思う事なんてない。
共にいるのだ。
そう思うだけで心が弾む。
ずっとずっと一緒だ。離れる事なんてない。
この世の有る限り、永遠に続いていく。生命の連鎖。
形のない、この。
ああ、きっと貴方とも。